盛大な抗議の声が、皇宮に響いた。
季節は初夏。山に行ったり海に行ったり川で水遊びしたり、ティリスの大好きな季節の始まりだ。
そもそも、早速海に遠征しよう計画を立てていたところ、どうも、体調が思わしくない気がして、ティリスはカタリーナに連れられて、具合を診てもらいに来たのだった。来たのに。
「おやおや、何を驚かれるやら。おめでとうございます、姫君。二ヶ月というところですな」
医師はあっさり言った。
「――何が、だ――」
何が、めでたいんだ。
何で、世間一般「おめでとう」なんだ。
「待ってよ先生、じゃあ、海は!? 山は!? 川は!?」
「もちろん、駆けて行ってはなりませんぞ。輿に乗せてもらってお行きなさい。あまり、体に負担をかけないように――」
「剣術の稽古はっ!!?」
「姫様、少し落ち着かれて下さい。こういったこと、覚悟なさっていなかったんですか!?」
医師は無慈悲だった。
少し驚いた様子のカタリーナも、無慈悲だった。
姫君の災難は、とてもあっさり始まった。
※ 災難ではありません。妊娠したくなかったら、きっちり避妊しましょーね。