ヴァン・ガーデン物語 【著】冴條玲 【絵】pino様

■ 第四節「クレールの魔術師」 ■≪ 第一章 クレールの魔術師 ≫
 
 彼女をさらったのは、若く美しい敵国の皇子だった。
 その少年はとても優しく微笑んで、彼女の巻き毛にしなやかな指を絡めて、耳元にそっと、優しい口付けを降らせた。
 覚えのない感触に途惑って、声をなくして立ち尽くした彼女に、甘く優美に微笑んで、身を引いた。