水晶師【テューカ】

一年目の秋

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もくじ

             

完 2000.05.26

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 真夏の熱気が失せて、少しずつ風が冷たくなってくる季節。
 会堂に水晶の洗礼を受けに来た帰り、梓は木に子猫を見つけて立ち止まった。登ったはいいけれど、こわくて下りられなくなったらしい。
 龍影は、まだしばらく出てきそうにないし。
 梓は人目が途絶えた隙に、そのどっしりとした樫の木に器用に登ってしまった。

「おいで」
 手を伸ばすが、子猫はなかなか寄ってこない。梓は辛抱強く待った。
「おいで。下ろしてあげる。何にもしないよ」
 やがて、子猫はおずおずと寄ってきた。梓がそっと抱き寄せ、木を降りようとした時だ。
「梓!?」
 龍影に見つかってしまった。
「ごめーん。今降りるから……」
「降りるって……おい、動くなよ、危な……」
 梓はさほど危なげなく降りてくる。とはいえ龍影はやきもきしながら見ていた。何より危ないし、人に見られたらどうする気で――
「梓、そこ、毛虫!」
「え? ――きゃっ」
 瞬間、バランスが崩れた。
「あ……」
「梓!!」

「ったた……」
 何とか受け止めたものの、龍影はかなり強く腰を打った。
「梓、大丈夫か!?」
 梓の方は、まだ茫然としていた。鼓動が速い。
「あ、猫……」
「抱いてるよ。ったく……」
 龍影の言う通り、梓はしっかりと子猫を抱いていた。
「び……びっくりした……」
「それはこっち! 虫がこわいんなら木になんか登るなよ!」
「……ごめん……あ、龍影大丈夫!?」
「腰が痛い」
「ごめ……どうしよう、人、呼んで……」
「いい! いいって。大丈夫」
 龍影は手をひらひらふりながら立ち上がった。さすがにまだ腰が痛い。
「ほんとに平気? つかまる? ごめんね、私……」
「へーき。だけど、反省してんならもう二度とやるなよ」
「……」
 梓はしょんぼりと頷いた。
「いやーっはっはっは。お見事! ないすきゃっちですな〜」
 軽く手を叩きつつ、やせた四十歳くらいの神官が寄ってきた。髪にはやや白髪が混じっているが、健康で人の良さそうな感じだ。
「ナイスキャッチじゃないですよ、優さま。梓一人まともに受け止められなくて……情けないったら」
「なんのなんの。守るべきものを守れたなら、十分格好いいってものでしょうが。ねえ、お嬢さん?」
 梓はこくこくと頷いた。
「よしよし、ポイントアップ間違いなしと」
「優さま!」
 顔見知り、それも頭が上がらない方のそれらしく、珍しく顔を赤くした龍影が抗議する。
「おや、茶々を助けてくださったのかな?」
 梓の抱いていた、薄い茶色の子猫の名前らしい。ふわふわの毛をしたメス猫だ。
「うんうん、お嬢さんになついておりますな」
 その声に合わせるように、猫がにゃあと甘えて鳴いた。
「差し上げますから、可愛がってやって下さい。血統書はあいにくないんですが、親に死に別れた不憫な子でしてね」
「……」
 正直、心から手放すのが惜しくなっていた。可愛くて可愛くて。けれど、義父が許すだろうか……?
「優さま。そーやってまた人に捨て猫を……」
「おや? 龍影君も一匹ほしいと」
「無茶言わないで下さい! もう5匹も引き受けてんですよ!? これ以上無理ですっ」
「うーん、龍影君のところは食事がいいから、あと二、三十匹はあげたかったんですがねえ。残念残念」
「優さま……」
 しばらく茶々をなでていた梓が、ふいに割り込んだ。
「あの、猫って馬車に乗せても大丈夫ですか?」
「しっかり抱いておけば大丈夫。なに、死にやしませんて」
 どうやら、茶々はもらい手を見つけたようだった。

<更新日 2000.05.12>

 

「茶々……」
 学園が始まって。梓は茶々をこね回して遊びながら、今日何度目かのため息をついた。幸い、茶々を飼うことは許してもらえたけれど。問題は――


「梓?」
 放課後、なかなか出てこない梓を探しに、龍影は一年の教室までやってきた。
 もう、誰も残っていない。
 先に帰ったろうか?
 約束こそしていないけれど、最近ではほぼ毎日、いつもの場所で会っていた。
 それなのに、今日はなぜだか現れなくて。
「龍影?」
 声は廊下の方からかかった。
「梓。どこ行ってたんだ?」
「資料室。なんか、教科書なくなっちゃって……」
「え?」
 困った顔で言いよどむ梓の様子に、龍影は真相を察した。
「とられたのか?」
「わかんない。ただ、最近、なんかいろいろ変で……」
 ひどく腹が立った。梓の態度が気に食わないか、あるいは成績を妬んでか――いずれにしろ、手口が汚い。曲がったことの大嫌いな龍影である。まして被害者は梓だ。
「梓、時間ある? 俺ので良ければ貸すから取りに来いよ。仕方ないから、しばらく机は信用しないしかないな……大丈夫だよな?」
 大丈夫、と言ったのは梓自身のことだ。それほど、精神的に弱くないとは思うけれど……。
「うん、大丈夫……ごめんね、迷惑かけて……」
 龍影は笑って首をふった。
「かえって嬉しいんだけどね、梓が俺のこと好きになってくれるんなら。ま、とにかく行こうぜ」
 相変わらず、本気なんだか冗談なんだかわからない口調で言ってくれる。だって、もうとっくに好きになっているに決まっているのに――やっぱり冗談だ。
「ところで、変なことって?」
 梓の話はかなり深刻だった。へたに校舎のそばを歩いていると、上から物が降ってきたりとか、机の中にねずみの死骸が入っていたりとか……。卑怯な上にも許せない。梓を殺す気だろうか?鉢植えが落ちてきたと言うから、へたをしたら死んでいる。
 教科書だって、かなり貴重品だ。なにしろ全て手で書き写すのだから。
「……何かあったら、俺に相談してから動くこと。いい?」
 別れ際、龍影は強引に梓に約束させた。どうしても、梓は人に頼るのが嫌らしい。けれど、それでは彼の方が気が気でない。あとはすみれに相談して、梓を張らせるか……。


 

 翌日、梓はロッカーに紙切れを見つけた。学園の地図で、裏庭の真ん中辺りに、赤く丸印がしてあった。

「何のつもりだろうな……」
 裏庭にはイチョウの木が多く、割合銀杏の臭いがきつい。放課後、龍影は用事でたっぷり一時間くらいは梓を待たせた。おかげで、生徒の大半は既に帰宅している。
「なんだろーねー。どきどきするね」
「遊びじゃないだろ〜」
 これだ。これがいけないのだ。並の女生徒なら、とっくに登校拒否をしていておかしくない。それなのに、まだこんなことを言っている。
「でも、宝探しみたいだよね。やっぱり、罠もあるのかなあ」
 龍影の後ろにぴったりついて、梓はひどく楽しげに言った。実際、楽しくて。ほとんどナマの冒険だ。残念なのは、前を歩かせてはもらえないこと……くらいだろうか?
「梓って、なんだかいっつも楽しそうだよな。なんかコツがある?」
「だって、龍影が一緒だもん。楽しいよ」
 ――え?
「きゃっ」
 いきなり龍影が立ち止まったので、梓は追突した。
「今の……」
 ふり返り、龍影はまじまじと梓を見た。
「本気?」
 龍影の視線に、梓はたじろいだ。
 どうしよう。
 ばかなこと言った――
 それでも、梓には偽れない。彼女は小さく頷いた。
「ごめん……。こんな、迷惑ばっかりかけといて……私、自分勝手だね」
 彼女の震える声も、龍影は初めて聞いた。
「梓……」
 彼女は黙ってうつむいている。
「何言ってんだよ!嬉しいって!俺のこと好きなら好きって、早く言えよな」
「え?」
 龍影はがぜん、気分が良くなって歩みを進めた。

「教科書!」
 目的の場所に近付いて。先に気付いたのは梓だった。
「こら!前に出るなって!」
 駆け出そうとした梓を押し止め、龍影が先を行く。
「わっ……」
 突然龍影の姿が揺れて、水音が続いた。
「龍影!?」

「つっ……」
 一瞬、何が起こったのかわからなかった。
 暗い、冷たい、何だかひりひりする。
 落とし穴――
「うっ……」
 吐き気のするようなひどい臭いが充満していた。よく見ると、浅く張られた水面に、蛇だか何だかの死骸が浮いている。
 一気に頭に血が上った。許せない。彼だったから良かったようなものの、こんな、ほとんど毒のような水――少女の綺麗で繊細な肌など、一発で腫れ上がる。
「龍影っ」
 ほとんど泣き声に近い梓の声に、龍影はハッと我に帰った。
「大丈夫!上がるから離れてて!離れてないとひどいからな!」

 何とかはい上がると、龍影は舌打ちした。
「龍……」
 彼のあまりの姿に、梓は絶句した。
「梓、悪いけどハンカチ貸して」
 彼女は言われるままにハンカチを差し出した。
「ごめん……」
 どうしていいかわからない。
「謝るなよ。梓のせいじゃないんだから。やつら……」
 龍影は手だけ拭いて立ち上がった。
「あれ、俺が取ってくるから梓はここにいて。動くなよ、絶対」


 

 龍影が学園のシャワーを借りて浴びている間に、梓はゆすぐだけでも、と彼の服を流しで洗った。ジャージを着て帰ると言っていたけれど、このままでは持ち帰るだけでも難しい。
「梓?」
 さっぱりした様子で出てきた龍影は、梓を確認するなり駆け寄って流しから引き離した。
「何やってんだよ!?――ばか!」
 梓がびくっと身を震わせる。
「ごめん……。服、水につけちゃいけないやつ……?」
「は?何言って……」
 しばし間を置いて、龍影は梓の言葉を理解した。
「そーじゃなくて!手が腫れただろ!?ほら」
 びっくりしている梓を眺めながら、龍影は一つため息をついた。
「泣くなよ。謝らなくていいんだから」
「ごめん……」
「……だから……」
 だめだ。すっかり混乱している。
「そんなに謝りたい?」
 梓が頷く。龍影はしばらく彼女を見ていた。
「じゃあ……キスしてもいい?」
 梓の震えが止まった。
 彼の手が、彼女に届くか届かないか――梓は夢中で逃げていた。
「あず――」
 小さく悲鳴を上げて、彼女は転倒した。
「あ、あの……だって、け、結婚もしてないのに!?」
「結婚って……」
 空気が白い。
 龍影は肩の力を抜いて、座り込んだままの梓に手を差し伸べた。
「冗談だよ、冗談。本気にするかなって思って」
 龍影に笑われて、梓はほっとするより恥ずかしくなってしまった。顔がほてっているのがわかる。
「……」
「ほら、立って。帰ろ」
 梓はとにかく頷いた。
 ――お育ちがいいよな――
 つくづくそう思う。こんな貴族社会で育つより、町の良識ある家で育てられた方が、よほど箱入り娘、と呼ぶにふさわしい価値観を持つらしい。
 割合、本気だったんだけどな――。
 まだ紅潮したままの頬が、なかなかに初々しい。龍影はそれとなく梓を見ながら、なんとなく前途多難の予感を覚えていた。

<更新日 2000.05.19>

 

 秋風が木枯らしに変わる頃。
「弓初め?」
「そ。知ってるだろ、賭弓だよ。帝の御前で、一の水晶を賭けて弓術を競うんだ」
 弓初めに、白羽家代表として出場――
 龍影は誇らしげだ。
「一の水晶って?」
「初物の水晶だよ。単に縁起物ってだけなんだけどね。でも、帝の御前で弓が引けるなんて――すごいだろ?」
「うん。龍影って、弓も得意なんだね」
 途端、彼はかくっとこけるようなそぶりをしてみせた。
「もじゃない!弓が得意なの。なんだよ、梓、もしかして知らなかったのか?白羽家って、弓造りの大家なんだぞ。去年も一昨年も射礼で優勝して、御矢を天皇家に上納つかまつってるんだから」
「射礼?」
「兄上が出るんだけど、賭弓以上に重要な弓術の競技会さ。これで優勝した家の弓矢が、その年、帝に使って頂けるんだ。弓造りとしては最高の名誉になる」
「すごーい」
「そーだよ。ただ……」
「ただ?」
 珍しく言いにくそうに、やや龍影の声が低まった。
「去年の弓初め、下の兄上が出たんだけど……優勝できなくってね。しかも、たまたま水晶師の変わり目だったんだ。一の水晶だけ、その新しい水晶師の水晶でさ。優さまの話では、今度の水晶師って歴代の水晶師の中でも稀に見る実力者らしいから――下手すると、その水晶使った家が射礼で優勝するかも」
「何で? 水晶がいいと、的に当たりやすいの?」
「射礼の場合は的に当たるのは前提なの。その上で威力が問題になるんだ。水晶を使った特別の御矢を、年に十二本作ってね。うちの二本を射礼で使うんだ。で、残りを上納するわけ。水晶の力をいかに引き出せたか、で弓造りとしての実力が評価されるんだけど……肝心の水晶に差があっちゃね」
「そっか……でも、最善を尽くせばいいんじゃない?今年負けたって、来年は同じ水晶使うんでしょ? 実力があるなら復権できるよ」
 梓がけろっとした顔で言う。
「……なんか、梓ってすっごい前向きだよなー。しかも言ってることけっこーキツイのに、全然深刻な感じになんないし」
「え?」
「だって、復権できなかったら実力がないってことだろ、今の」
 梓は何も言わず、ただいたずらっぽく微笑んだ。
 龍影が不敵に笑い返す。
「俺も同意見だけどね。今年の一の水晶はうちがもらうし」
「応援してるね」
「ありがと。上の兄上も、もう少し融通がきけば……」
 珍しく龍影の口調が憂いを帯びた。そういえば、あまり彼の兄弟のことは聞かない。
「……梓」
「何?」
「この間のこと、本気だったらどう?」
「え?」
 突然真剣な瞳で見つめられ、梓は途惑った。
「今のままの白羽じゃ、天邏につり合わないのはわかってる。だけど――」
「この間のことって……」
 龍影は立ち止まると、梓に向き直った。
「俺、梓が好きだよ。何だって、平気な顔でこなしてみせるけど――汚れたものばかり見てると、時々ひどく疲れて――何が綺麗で、何が汚いのかって、忘れそうになるんだ」
「龍影……」
「俺はいやなんだ。たとえ何をしなくちゃいけなくても、誇りだけはなくしたくない。夢は見失いたくない。朱に交わっても、赤くなってしまいたくないんだ。汚いことはみんな引き受ける。だから、梓にだけは今のまま――綺麗なままで、俺のそばにいてほしい」
 彼の目は、怖いほど真剣だった。
「……龍影なの?龍影が、何かしてくれたの?」
 学期初めにあれほどひどかった嫌がらせが、このところふつりとなくなっていた。
「……やったよ」
 終わりのない勢力争い。貴族社会の汚さは、何もかもがそれに起因する。焦り、恨み、憤り――そんなものが、モラルを持たない者を出現させる。
「大丈夫。梓が気に病むようなことはしてない。大丈夫だから――梓がいれば、俺は間違えない。梓に汚いもの見せたくないっていうのは、俺のわがままだけどさ。本当に、救いようもなく汚いことは、俺はしない。誇りにかけて」
「龍影……」
 彼はしばし梓を見つめると、真剣な眼差しのままに、言った。
「一つだけ、答えて。俺が迎えに行くまで待てる?」
「……迎えに……」
「いつ迎えに行けるか、正直わからない。だけど、必ず迎えに行くから――だから待っててくれって、そう言ったら待てる?」
 何だか、不思議に胸の奥が熱かった。好き、という以上の熱さだ。
「――私でいいの?」
 その問いに、彼はどこか余裕さえある微笑みを返した。
「梓がいいんだ」
 暖かさが込み上げる。
 胸が詰まって、言葉も出なかった。
「待てる?」
 先に頷いた。それから答えた。
「待てる」
 彼の気持ち良い笑みが、まぶたに焼きついた。


 

 それから数日、彼はいつもの場所に来なかった。
 あの時、ほとんど言葉を返せなかったから。
 話したいことはたくさんあるのに――
 梓は少し、不安と落ち着かなさとを持て余していた。


 

「旦那様がお部屋でお待ちです」
 梓が侍女にそう告げられたのは、帰宅後すぐのことだった。義父がこの時間帯に家にいるなんて、珍しい。
 何かあったんだろうか――
 とにかく、彼女は義父の部屋へと急いだ。お待たせしてはいけない。

「梓、畏れ多くも帝から、直々の御紹介だ。水晶師に嫁ぎなさい」
 あまりに突然、あっさり言われて、心の準備も何もあったものではなかった。しばし事態が飲み込めない。何かの冗談、そうとしか思えなかった。
「水晶師は少々、人付き合いを嫌われていてな。使用人は置かれていない。――つまり、おまえが家事をすることになるが……」
「ま、待って下さい!」
 どんどん話が進むので、やっと冗談ではないらしい、と理解した。
「……どうした」
「そんな、いくらなんでも困ります。見ず知らずの方と――」
「水晶師は少々、厭世的な方だが良い方だ。優しくして下さる。安心して嫁ぎなさい」
「義父様!」
 彼女が従わないのを感じ取り、伯は眉をひそめた。
「梓、水晶師ほど未来が開けていながら、おまえをないがしろにしないような――そんな方が、一体何人いると思っている?」
「……迎えに来てくれると、約して下さった方がいるんです。お願いです、待たせて下さい」
 いつの間に――。
 それが、伯の正直な感想だったろう。けれど、何といっても世間知らずの梓のことだ。天邏の力は大きい。子供も実子が一人と彼女だけだから、家柄目当ての求婚――その可能性が高い。
「――相手は?」
「白羽家の……龍影様です」
 ガタっと、伯は椅子を蹴立てて立ち上がっていた。
「……!」
 驚きと怒りのあまり、しばらく声も出なかった。
「義父様……?」
「梓、正気か!? 白……」
 梓の方こそ驚いた。確かに、多少家柄にこそ劣るだろうけれど。彼女を養女にしてくれた義父が、ここまで聞く耳持たずに激昂するとは。
「梓、命令だ。養女に迎えてやった恩、よもや忘れてはいまいな。水晶師に嫁ぎなさい」
「と……」
「白羽なぞ絶対に許さん! 従わないなら――あの家は私が取り潰す」
 愕然と目を見開く彼女に、しかし、伯は冷たく厳しい視線を向けるだけだった。
「話はそれだけだ。戻りなさい」

 その3日後、彼女は学園すらやめさせられた。

<更新日 2000.05.26>

*  に続く

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