ただ一つの願いが叶うなら
神にでも鬼にでも、身も心も捧ぐから
――あの子らに、未来を――

霞月 〜魂盗り〜

この物語は、18歳以上の閲覧を対象とした表現を含みます。
恐れ入りますが、18歳未満の方は閲覧をご遠慮下さい。

「飛影はあんたが束ねろ」
 それだけ言うと、御影は川とは反対方向に、紫苑をドンと突き飛ばした。
 そのまま、彼自身はその反動で川に落ちていった。

〜呪羅族の少女〜
霞月

 短刀をふりかざすのは、やつれた女だった。
 長い黒髪が舞う。
 彼女を見、彼自身が覚えた感覚が、御影には納得いかなかった。

夢見た朝

「おいしいですかー?」
「おいしーっ!」
 子らが大喜びで由良に群がって行く。
 その様子を見ていた霞月の目から、ふいに、涙が溢れた。
「あぁっ。御影様、何泣かしてるんですか〜っ!」

〜失われた契約〜
朱羅

 霞月の瞳は、いつしか痛みと怨嗟に揺れていた。それでも心の内を吐露したのは、御影だったからか。
 霞月の身は言葉を裏切り、彼の腕の中に、全てを委ねたいと震えていた。その支えをなくそうものなら、壊れてしまいそうな危うさだった。
 それなのに、なお彼を拒む。

慚愧

「霞月、殺すな……」
「殺すな、だと……!?」
 笑わせるなと、霞月は自分自身をか御影をか、涙を流しながらあざ笑った。御影の身に、深くその短刀を沈めて行く。
「無駄に、殺すな。俺を贄に使え」

〜怒れる天地〜
祟り

「だめです! 祟り神になってはだめです!」
 由良の慟哭も、もはや届かない。
 失われた神の怒りが荒れ狂い、雷雨となって地を打った。

 神を失った大地に、蒼穹が戻る。
 多くを失った、その下で――

【著】冴條玲

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